私たちが日々、口にする食べ物。最近では“健康でスマートな生活”をキーワードに、
多くの人が、オーガニックなものを求めるようになりました。
特に、著名なインスタグラマーやブロガーの方が有機栽培の食品をオススメしているのをよく見かけます。
が、
そもそも有機栽培は、どんなものが該当し、食べることでなにが起きるかご存知ですか?
憧れの人がやっていたから、ではなく、本当の意味でオーガニックなものに触れるため、
有機野菜を取り扱う八百屋さんである“八百為商店”さんにお話を聞いてみました。
そうしたら、野菜は、私たちが食べた後も生きている、体内で共存するようなものであることが分かったんです。
第1回は下記リンクから
━━前回までお聞きした畑の土壌内のバクテリアなんですが、自然の中で育む以外に人工的に増やすことなどもできるんでしょうか。
八百為さん 人間の力だけで、というのは現状できません。そこは自然の力に頼るしかないんですね。
ただし、助けてあげることはできます。バクテリアのための栄養剤があるので、それを土壌に混ぜてあげるんです。これは農薬などとは違う自然由来のものなので、有機栽培の一環として使用されます。
栄養剤は、静岡県の三保松原の再生にも使用されています。野菜などをおいしくするだけではなく、植物の活性化にもバクテリアは良い影響を与えてくれるんです。
━━なるほど、植物全般に共通することなんですね。
八百為さん そうなんです。
ただし、栄養剤を使用したから手をかけずに育てられるということではありません。
有機栽培の野菜は見た目がキレイで、形がいい野菜を育てる、というような努力の仕方ではないんです。バクテリアを豊富に含んだ野菜や果物を作るために、自然の状態を維持しつつも、人間のライフサイクルに合わせた人工的収穫をするという、相反するものの中で途方もない努力をしているんです。
だから普通の野菜より高いんです。根本的な考え方が違うんですね。
有機栽培の野菜はどのように見分けるか
━━ここまでお話をうかがって有機栽培の特徴を少し理解してきました。たとえば、明日から有機栽培の野菜を買いたい、と考えたときに、有機栽培野菜を扱っているお店に行けばそれでいいんでしょうか。
八百為さん ちょっと違いますね。有機栽培をたくさん扱うお店の中にも、そうではないものが販売されていることもあります。
ちゃんと見分けるならば「有機JASマーク」の入ったものを購入するのが一番ですね。
━━今まで気にしたことがありませんでした…。有機栽培の野菜などに与えられるマークなんですか?
八百為さん 有機JASマークは、農林水産省が設定した規格を満たした土壌で育てられた農産物に表記できるマークです。この規格には、化学的に生成した農薬や肥料などを使用していないことなどがあたります。
これは、今目の前にある野菜の栽培に際して使用していない、というだけではなく、ほとんどの場合は野菜を栽培する土壌に使用していない、という基準が設けられています。
そもそも「有機」という言葉はこの有機JASマーク認定を受けていないと使用できないんですよ。
━━なるほど、そうすると、たとえば農薬を使用して野菜の栽培を行っていた農家の方が、来月から有機栽培にシフトしようとしても…。
八百為さん 有機野菜とは名乗れません。農薬などの薬剤は土壌にまくと10年くらいは抜けません。そうすると、その土壌に薬剤が残っている間はバクテリアが死んでいってしまいます。
だから、除草剤なんかは間違っても使用できないんです。そのため、農家の方は雑草を1本ずつ手で抜いています。
━━えー! 1本ずつ! それは重労働ですね!
八百為さん そうです。さきほどお話したように、手間も暇も、また時間もかかるんです。
また、化学的な薬品などを使わずにケアした土壌のうち、何メートル以内にどの程度バクテリアがいるかというのも有機JASマーク認定には必要になります。
━━スーパーなどの金額の安い販売店で「有機」という文字をほとんど見かけない理由が分かりました。逆に、農薬を使用している農家の方の土壌は、バクテリアを増やす努力などはしていらっしゃるんでしょうか。
八百為さん そういう場合は土壌の天地返しをしているところがあります。土壌を数メートル掘って、地中深くの土と上下逆にするんです。そこに栄養剤を入れて2,3年休ませてバクテリアを増やしたりします。ただ、また薬品を使用すればバクテリアは死んでしまいますので。
━━かなり大がかりですね。そうして土壌を休ませて、さらに栽培すると全部で5年ほど時間がかかると思います。それでも有機JASマークは…。
八百為さん つきません。それだけ、有機JASマークは厳しい基準の表示なんです。
━━自分の体の中に入るものなのに、勉強不足でした。農家さんの努力だけでどうにかなる、というものでもないんですね。綿密な計画というか、継続して作り続けなくてはいけないと…。
八百為さん そうです。そもそもの土壌にたくさんバクテリアがいて、かつ最初からずっと薬剤などを使わずに育てて、厳しい基準をクリアする。そうしなければ「有機」ではないんです。
栽培を始める前から有機栽培でなければ、よほど時間をかけないと有機JASマークをもらえません。そして有機野菜は、手間のかかる分少しだけ高い。その分、売れないからといって農薬などを使用して手間を省くと、もうおしまいです。
たとえ売れなくても、どんなに手間がかかっても、ずっと有機栽培にこだわっていなければ、有機栽培農家ではいられないんです。
━━農家の方にかなりの負担を強いると思います。
八百為さん それでも、人間の体に良いものを作るためには仕方がないんです。
だからこそ、より良いものを選んで欲しいな、と思います。それは誰のためでもなく、自分と、そのお子さんに。抵抗力のある人間に育って欲しい、というのが、有機野菜をオススメする理由です。
子供のうちからバクテリアの豊富な野菜を食べて、病気などに強い抵抗力を持つ人間に育つ、というのは大切なことです。
少しずつ消費者の意識が変わっている
━━八百為さんは、たくさんの飲食店の卸し販売を積極的に行っていらっしゃいます。飲食店側でも、有機栽培への意識は広まっているんでしょうか。
八百為さん もちろん広まっています。十分か、というとまだ判断しかねるところですが。有機栽培野菜の使用へシフトするお店の方もいらっしゃいます。
あとは、消費者自体の意識が変わったというのも大きいですね。
━━購入するときに有機栽培か尋ねられたりするんでしょうか。
八百為さん それもありますが、あとは有機栽培の野菜を使用している飲食店について問い合わせがあったりします。
━━お客さん側で有機栽培に関する知見をお持ちの方もいらっしゃるんですね。
八百為さん 徐々に、です。消費者側の意識が変わらない限り、お店側の変化もそうそうないと思います。たとえば、食事に行った際や問い合わせる際に「有機野菜を使用していますか」とかね。
有機野菜は高い、1つのお野菜が1,000円も2,000円も金額の違うものではありません。そのため、問い合わせなどが多数あれば、お店側も検討せざるをえなくなると思います。一種のムーブメントというか、お店側に検討させるきっかけを造るのは、消費者の役割だと思っています。
そのためにも、有機栽培についての情報を発信していきます。
━━これまでのお話を聞いていると、非常に意義のある活動に感じます。
八百為さん 具体的には、有機栽培の体験できる、また畑をレンタルできるような施設を計画しています。行政なども巻き込んでね。
スタートすれば、またお知らせしますが、そういう場所を作らないと、なかなか流布することはできませんから。
━━今日は大変勉強になりました! その際はぜひまた取材させてください! 今日はお忙しいところありがとうございました。
日々の食事のことは、多くの方が興味のあるトピックです。
今回の記事の内容は、あくまでもさわり程度。有機栽培はもっと奧の深いものです。気になる方は、一度八百為さんでお話をお聞きする、というのも1つの選択肢です。
まずは、今日のご飯に有機栽培野菜がどれだけ入っているのか、そんなところから気にしてみてもいいかもしれませんね。
教えてくれたのは
青果業
住所 小田原市南町3-2-43
電話 0465-22-2377
営業時間 9:30〜18:30
定休日 日曜・祭日
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